FET差動バッファ式USB DAC Version2の製作

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タイトルの通りです。

■製作する「FET差動バッファ式USB DAC Version2」について

DIYオーディオの有名サイト「情熱の真空管」で製作法が紹介されているDACです。
PCからUSBケーブルで接続するとバスパワーでDACとして機能します。
実際に制作した方のレビューを見てみてもなかなかいい感触みたいです。

 

■部品の用意

回路図や基板パターンが公開されていますので、そこに書いてあるものをそのまま揃えれば部品が用意できます。
…という書き方をしてしまうと乱暴で嫌な感じになってしまうので参考情報ですが、
ぺるけ氏が以前パーツを頒布されていた頃の頒布情報ページで抵抗器以外の必要部品は一通り確認できます。

抵抗器に関しては、自分は秋月の抵抗器全部入りセットを買ったところ回路中のほとんどの種類(16kΩ以外)は揃いました。16kΩもセット内から抵抗器を2本使えば作れます。
DAC一個できればそれ以上の部品は全くいらない」という場合にはやはり回路図や基板パターンをじっくり眺めて必要な抵抗をリストアップしていく必要があると思います。

 

■製作記事からの変更点

様々なサイトで横断的に部品を注文していくのは面倒だし送料も増えるし部品の注文抜けも起こりそうで嫌だったため、基板と銅線のみモノタロウ、他は全て秋月から注文する形で部品を揃えることにしました。とはいっても指定されている通りの部品を秋月ですべて揃えることはできなかったため、以下のように部品変更して組んでいます。

 

2SK30A → 2SK2880-D(定電流回路目的なので2SK30Aじゃないといけない理由はなさそう)
2SK117 → 2SK2881頒布案内ページの情報を参考に代替)
2.7mHインダクタ → 2.2mHインダクタ(2.7mHインダクタは特注品で秋月では取扱なし)

ぺるけ氏指定の2.7mHインダクタについては特殊電機にて取り扱っているようなので、
製作記事に忠実に作る場合はそちらを選択することができます。

 

2SK30Aに関しては秋月に売っていなかったため2SK2880を代替として使用しました。
製作後に気付きましたが、定電流回路については本記事で製作している「FET差動バッファ式USB DAC V2」を用いた別のDACUSB DAC+Bluetoothレシーバー Version3.0」の記事にてもう少し情報が補足されています。

本機の定電流回路の電流値は必ずしも3.6mA~3.8mAでなければならないのではありません。たまたまそれくらいのIDSS値の2SK30Aが多いからその値を選んだにすぎません。

とのことで、さらに補足として記事で書かれている範囲外のIDSS値の場合のドレイン抵抗についても書かれており、「2SK2881でも代用できる」とも書かれています。

私が入手した2SK2880-Dのドレイン遮断電流(=IDSS)は2.5~6.0mAと書かれていますが、入手した10個中6個が4.3mA程度、4個が3~3.5mA程度でした。
IDSS値を測定するための回路はこのページを参考にしました。

 

作業に関しては手に入れた部品を製作記事の基板パターンの通りに組み上げただけなので割愛します。


注意点として、2SK117→2SK2881に部品を替えて製作する場合は基板パターンの2SK117の半月型の絵と逆向きに2SK2881を取り付ける必要があります。(データシートを見ると2SK1172SK2881で足が逆向きなのが確認できます。パターン図上のS・G・Dの字に従って取り付けます)

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製作記事と同様にAKI.DACから電源を拝借する形で作ろうとしましたが、何かやらかしてしまったらしく製作途中から電源を拝借するとAKI.DACが落ちるようになってしまったため、別途5Vの電源アダプタから電力を供給する形に変更して動かしています。

追記:これは電源線を何度か付けたり外したりしているうちに近くの銅線の基板裏側部に出していた部分が曲がってショートを起こし、ポリスイッチが作動していたためでした。ショートしていた部分を直したところUSB給電で動くようになりました。

■感想

OUTPUTをヘッドホン端子にして音を聴いてみたところ、手元にあったATH-M50X(38Ω)では十二分な音量を得られました。AKG K701(62 Ω)で十分な音量を得ようとすると歪んでしまったので、能率の悪いヘッドホンに直結というような使い方は少し苦しいかもしれません。

いまのところ特性を測定できる環境が揃っていないので100%主観での感想になりますが、ものすごくフラットな音です。ノイズレスで音の分離感も悪くないのですが、悪くない止まりというか、手持ちの機材の中でわざわざこれを使って音を聴きたいかというと微妙程度の印象でした。
同じぺるけ(木村哲)氏の著書「続 理解しながら作るヘッドホン・アンプ」の「差動2段ヘッドホンアンプ」も同時に作っているのですが、差動2段ヘッドホンアンプの方が魅力的な音をしているように感じます。
(こちらも後日記事を書きたいと思います)

 

同じ回路を制作した方の製作記事では「完成直後の音は思ってた以上にがっかり感ある」というような評を見かけたので数日したらこの印象が変わるような音に変わっているかもしれませんが、今回の製作では2.7mHインダクタも2SK117も使っていないので本来の設計通りの音は出ていないのかなという気もします。

 

(追記)耐えがたいくらい出音がつまらなかったため実はこの文章を書いた翌日(エージング3日目)に一度見切りをつけて放棄してしまったのですが、1週間ほどして気持ちがフラットになってきた頃、記事を公開しようと思い再度電源を入れてみたところ当初と印象が大分違う音に変わっていました。低音の量感が増したのと明らかに音の分離がよくなっています。現状少し低音に締まりがない印象がないでもないですが、もう少し動かしてみて出音が安定するのを待ってみようかと思える程度に期待感のある音を出し始めています。最初に動かしたときと本当に印象が違いすぎて驚いています。